シモン・マグス
Simon Magus

生没年不詳(1世紀頃)

シモン・マグス(偉大なシモンの意)はサマリアの小さな村で生まれた。
洗礼者ヨハネの弟子であったが、ヨハネが斬首された後、アレクサンドリアの町で魔術を学び、その後サマリアとローマで活動。
彼は世界は神ではなく、神よりも低いものが創造し支配していて、ただ神の名を語っているに過ぎない・・・だからこの世界は悪に満ちたものであると考えた。そして、この世界の一部である肉体に閉じ込められている霊が高まれば、人間は神と同等の力を持つ、という考え方を人々に説いた。
霊的に高次元の彼の魔術は凄まじかった。
残されている資料がすべて敵対するキリスト教側のものなので、かなり悪意も込められていると思うが、彼の魔術は、悪魔を呼び出し、石をパンに変え、空を自由に飛び、岩をくぐり抜け、様々な獣に変身できたという。
キリストの高弟である聖者ペテロとローマ皇帝の前で術を競い合い空を飛んでいるときにペテロの祈りで術を破られ墜落死したといわれる。(これもキリスト教の伝承)
キリスト教圏では常に悪の魔術師として扱われるシモンであるが、今日的に解釈すれば、彼は人間を世界、あるいは人間社会という悪から救済しようとしたのである。
彼が悪に対抗する手段として用いたのが魔術だったのである。
ただ、彼が人間は神と同等になりうる、という考え方がキリスト教圏ではタブーとされている考え方なのである。