白と黒 白魔術の基礎 ヘルメス文書 アラビアの白魔術 エジプトの白魔術 魔術師列伝

16世紀の哲学者ジャンバッティスタ・デラ・ポルタの書物『自然魔法』によれば、魔術は紀元前6世紀頃の古代ペルシャにすでに存在していたと言います。
最初の魔術師はゾロアスター(zarathstra)であるとも述べていますが、実際は世界各地に魔術の発祥と数々の伝承の歴史があるため、その真偽は定かではありません。

※ジャンバッティスタ・デラ・ポルタ:
イタリア生まれの哲学者であり科学者でもある彼は当時のいわゆる博学者。
彼の著作は人相学から気象学、天文学、数学、詩、音楽、占星学、錬金術、生物学まで多岐に渡り後期のルネサンス人。

左の写真は16世紀の魔術師が天使召喚の白魔術の際に使用した大印章。
この印章自体も天使から授かったものと言われています。

世界中(アラビア、アフリカ、アジアなど)で全く関連がないままに別々に発祥したはずの魔術ですが、そこには共通点がありました。それは、神や天使、精霊、聖なる妖精などの力を借りて行う魔術悪魔、悪霊などの邪悪な力を使う魔術、妖術が存在することです。
前者を白魔術、後者を黒魔術と呼ぶようになったのは古代エジプトからのようです。

3世紀頃に使用された古代の魔術道具

 

真偽をめぐって物議をかもした妖精写真。(コティングリー妖精事件)
後にほとんどの写真は捏造であると高齢になった彼女たちが告白。
但し、1枚だけ本物があるとも…


白魔術は天体、動植物、鉱物、精霊などの持つ力を利用して、超自然的な効果を得るために太古より世界各地で研究されてきましたが、中世ヨーロッパではそれらの魔術が集まり、それぞれの魔術の長所が融合して、色々な分野へと別れるものもでてきました。占星術、錬金術なども白魔術の一分野であったのです。

白魔術とは自然魔法(前述)とも呼ばれていて、ルネサンス時代の魔術師は自然科学や現象、哲学などにも造詣が深かったようです。
当時はもうすでに1000年以上の人類の歴史があったわけですから、その経験則の伝承の積み重ねがルネサンス期のヨーロッパに世界中から集まり、魔術が体系づけられました。

しかし、世界中の魔術が集まっても、それをさらに深めて研究するためには、方向性が必要でした。
体系づけられることはとても難しい作業であり、体系づける必要に迫られました。

そのために大きな役割を果たしたのは偶然ヨーロッパに伝わったヘルメス文書と呼ばれる太古に書かれた書物でした。

長きに渡って世界中で行われてきた魔術・魔法は、ルネサンスにおいてヘルメス文書を初めてその礎としたのです。

 
 

ヘルメス文書とは、著者にヘルメス・トリスメギストス(三重に偉大なヘルメスの意)とある事からそう呼ばれています。
同時にヘルメスが記した言葉を刻んだエメラルド製のタブレットがあり、それらの中には世界の誕生や万物の生成の秘密が書かれているといわれます。

※ヘルメス・トリスメギストス:
はピラミッドの建造者である、という説もありますが、別の説では彼は叡智の神で文書やタブレットはマリア・プロフェティサという魔術師に託されたものだという説もあります。
また、別の説では彼はエジプトの王の一人であったともいわれています。

又、彼は錬金術師であったともいわれていて、各時代の錬金術師(錬金術の歴史は長く数百年に及びます。)はこの文書の研究、中でも12世紀ごろに発見されたエメラルド・タブレットには12の錬金術の奥義が記されているとし、この短文を知らない錬金術師はいないとまで言われています。

ちなみに万有引力の発見者として有名なアイザック・ニュートンは錬金術師ではなかったものの晩年は錬金術研究者(錬金術を学問として探求したようです。)として、このエメラルド・タブレットの文章を英訳し、現在もケンブリッジ大キングスカレッジ図書館に所蔵されています。

 

エメラルド・タブレットの全文が記されている17世紀の版画

エメラルド・タブレット文書(全文:Wikipedia)

 

 

ヘルメス文書の内容は要約すれば、『万物はひとつのものからできていて、すべては同じ自然現象によって関連している』というものです。
簡単な説明をすれば、万物は共通していて、すべての現象を関連づけることができる..という考え方です。
ルネサンス期の魔術師や錬金術師は、この思想に基づき、自分達の手で変化を起こそうとする、自分達の研究との共通点を見い出し、彼らは研究の方向性を持つことができたのです。


『千一夜物語』でおなじみのアラビアは、魔術の国としても有名です。
占星術、錬金術の基礎もアラビアから伝来したものですが、そのアラビアの魔術もインド、ギリシャ、中国などから更に古い時代に伝来し、アラビア独自の魔術と融合したもののようです。

アラビアの魔術で有名なものは変身術です。この魔術は中国から伝来したものが、アラビアで更に磨かれて、本家の中国よりも術に多様性がもたれ、白魔術だけでなく、黒魔術の分野にも大きな影響をもたらしました。
アラビアの魔術が初めてヨーロッパに持ち込まれたのは、やはりルネサンス期。
持ち込んだ人物は薔薇十字団の創始者、クリスチャン・ローゼンクロイツであったようです。

薔薇十字団の証明書

 

ローゼンクロイツの肖像画といわれる絵

 

ローゼンクロイツはアラビアにある秘密の都市ダムカルで魔術書『Mの書』を授けられたといいます。
彼はその書を解読、研究しアラビア魔術と東方の秘密の知識を解読したといわれています。
『Mの書』には自然魔術の奥義が書かれていたといいます。

 


エジプトの魔術はエジプトの数多くの神々の力を利用するものです。
特に太陽神ラー冥府の神オシリスの力は絶大で、この二人の神々の力を借りる魔術が一番多く存在します。
エジプト魔術は、『カー』と呼ばれる魂、霊、霊力が魔力と密接に関係しています。
『カー』のコントロールと鍛錬はエジプトの魔術師や神官にとってはとても重要なことなのです。
エジプト・ギザのピラミッド
エジプト魔術はファラオと呼ばれる王、神官、そして魔術師が主に行い、その奥義を伝承していました。彼らにとって、魔術はどの位神々の力を体現できるかを表しているために、彼らは競って魔術の力を比べたそうです。
しかし、エジプト史上最高の魔術の力を持っていたのは、なんとユダヤ教の大予言者モーゼであったのです。エジプトの史実を振り返っても、彼以上の魔術師は登場しません。
エジプトの魔術師の中にも自分の私利私欲のために魔術を行うものがいました。しかし、そんな彼らにラーやオシリスがいつまでも力を貸すはずがありません。彼らは魔力を失い、邪悪な力に頼る魔術師も出てきました。
人々は彼らの魔術を『黒い魔術』と呼び恐れました。
反対に良い魔術師や神官の行う魔術は『白い魔術』と呼び尊んだのです。それは現代の『白魔術』『黒魔術』の語源となりました。
バべルの塔の絵
 

 

おまえたちを知識の門へと導く案内人を探すが良い。
そこには、闇から浄められた輝く光がある。 〜ヘルメス文書より〜

カリオストロ クロウリー
サン・ジェルマン 諸葛亮
シモン・マグス ジョン・ディー
シルベステル二世 ソロモン
パラケルスス ベーコン
ヘルメス レヴィ
ローゼンクロイツ モーゼ

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